コラム

最低賃金1,177円時代の求人票の見直し方|飲食・小売の店長・オーナー向け

最低賃金1,177円時代の求人票の見直し方|飲食・小売の店長・オーナー向け
※写真はイメージです

2026年度の地域別最低賃金が出そろいました。改定額の全国加重平均は時給1,177円。昨年度から56円の引き上げで、目安制度が始まった昭和53年度以降で2番目に大きい上げ幅です。

人件費の負担が増えるのはもちろんですが、採用の現場でまず影響が出るのは求人票です。改定前の時給のまま募集を続けていると、発効日以降は実際の支払いが最低賃金を下回りかねないだけでなく、「相場を知らないお店」として応募者からも敬遠されます。

この記事では、飲食・小売の店長やオーナーが今すぐ確認すべきポイントを、厚生労働省の公表資料をもとに整理します。

この記事でわかること

  • 2026年度の最低賃金がいくらになり、いつから変わるのか(都道府県別)
  • 求人票・時給表記で今すぐ見直すべき5つのポイント
  • 月給制スタッフ・固定残業代がある場合の時給換算のしかた

※この記事の情報は2026年10月6日時点のものです。

目次
  1. 2026年度の最低賃金は全国平均1,177円(56円引き上げ)
  2. 求人票で今すぐ見直す5つのポイント
  3. 時給だけで勝負しない求人票のつくり方
  4. 発効日までにやることチェックリスト
  5. まとめ

2026年度の最低賃金は全国平均1,177円(56円引き上げ)

厚生労働省の発表によると、2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は、47都道府県で54円〜65円の引き上げが答申され、全国加重平均は1,177円(昨年度1,121円)となりました。

出典:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」

主な都道府県の改定額と発効日は次のとおりです。

都道府県改定額引き上げ額発効日
東京都1,280円+54円2026年10月1日
神奈川県1,279円+54円2026年10月1日
大阪府1,231円+54円2026年10月1日
愛知県1,195円+55円2026年10月1日
北海道1,131円+56円2026年10月1日
福岡県1,114円+57円2026年10月4日

図1:主な都道府県の改定額(2026年度)

東京都1,280円
神奈川県1,279円
大阪府1,231円
愛知県1,195円
全国加重平均1,177円
北海道1,131円
福岡県1,114円

横棒は1,000円を起点にした差の長さ。数字は本文の出典(厚生労働省)と同じです。

全国で最も高いのは東京都の1,280円、最も低いのは宮崎県の1,085円です。全都道府県の金額と発効日は、厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で確認できます。

発効日は都道府県ごとに違う

見落としやすいのが発効日です。2026年度は10月1日から12月2日にかけて、都道府県ごとに順次発効します。東京・大阪など10月1日発効の地域もあれば、京都は11月16日、沖縄は12月2日と2ヶ月近く差があります。

複数の都道府県に店舗がある場合は、店舗ごとに「その県の発効日」から新しい最低賃金が適用される点に注意してください。

求人票で今すぐ見直す5つのポイント

1. 募集時給が新しい最低賃金を下回っていないか

まず基本の確認です。求人媒体や店頭の貼り紙に出ている時給が、自店の都道府県の新しい最低賃金以上になっているかを確認します。

発効日前であっても、これから掲載する求人は新しい金額を前提に組み直すのが安全です。発効日をまたいで掲載が続く求人で古い時給のままだと、掲載途中から新しい最低賃金を下回る表示になってしまいます。

2. 研修期間の時給も最低賃金以上に

「研修期間中は時給○○円」と本採用より低い時給を設定しているお店は、その研修時給も最低賃金以上である必要があります。

最低賃金を下回る減額(最低賃金の減額特例)は、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限って認められる例外的な制度です。許可を取らずに「研修中だから」と最低賃金未満にすることはできません。

3. 月給制スタッフは「時給換算」で確認する

社員や月給制のスタッフも、最低賃金の対象です。月給を時給に換算して確認します。

月給(基本給等)÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金

たとえば1ヶ月の平均所定労働時間が160時間の場合、東京都(1,280円)では1,280円 × 160時間 = 204,800円が下限の目安になります。月給20万円の求人は、この例では下回ってしまう計算です。

なお、換算の対象になるのは基本給と諸手当の一部で、通勤手当・精皆勤手当・家族手当や、時間外手当・休日手当などは計算から除外されます。手当の多い給与構成のお店は、基本給ベースで一度計算し直してみてください。

4. 固定残業代は「残業代を除いた部分」で計算する

固定残業代を◯時間分含む月給25万円といった形の求人は、固定残業代を除いた基本給部分で時給換算して、最低賃金を上回っているかを確認します。

計算例:固定残業代3万円を含む月給25万円の場合

数字を入れて確認してみます。月給25万円のうち固定残業代が3万円、1ヶ月の平均所定労働時間が160時間だとすると、時給換算の対象は25万円から3万円を除いた22万円です。

22万円 ÷ 160時間 = 1,375円

この場合、東京都の1,280円は上回っていますが、固定残業代込みの25万円で計算してしまうと約1,563円となり、実際より1割以上(約14%)高く見積もることになります。固定残業代を除いた金額で確認するのがポイントです。

図2:月給制スタッフの時給換算(固定残業代がある場合)

月給(基本給等)−固定残業代÷月の所定労働時間≧最低賃金

25万円−3万円=22万円÷160時間=1,375円≧1,280円(東京都)

本文の計算例。通勤手当・精皆勤手当・家族手当、時間外手当・休日手当なども計算から除外します。

あわせて、求人票には「基本給」「固定残業代の金額と時間数」「超過分は別途支給」の内訳を明記しましょう。内訳のない月給総額だけの表記は、応募者の不信にもつながります。

5. 最低賃金ちょうどは相場ではなく下限

最低賃金はあくまで法律上の下限です。周辺の店舗が引き上げ後の水準で募集を始めると、最低賃金ちょうどの求人は相対的に見劣りしていきます。

同じ駅・同じ商圏の競合がいくらで募集しているかを、求人媒体で月に一度は確認する習慣をおすすめします。

時給だけで勝負しない求人票のつくり方

時給を上げられる幅には限りがあります。だからこそ、金額以外の情報量で差をつける余地があります。

  • シフトの柔軟さを具体的に:「週2日・1日3時間からOK」「テスト期間は休み調整可」など、数字で書く
  • 仕事内容を分解して書く:「ホール業務全般」ではなく、最初の1ヶ月でやること・慣れたら任されることを分ける
  • 職場の様子がわかる写真:働く人の顔が見える写真は、文字より雇用環境を伝えます

時給の見直しと同時に、求人票の中身も一度棚卸ししてみてください。

発効日までにやることチェックリスト

最後に、最低賃金の発効日までに済ませておきたい確認事項をまとめます。

  • 自店の都道府県の改定額と発効日を厚生労働省の一覧で確認した
  • 掲載中・掲載予定の求人票の時給をすべて新しい金額以上にした
  • 研修時給を含め、最低賃金未満の時給設定が残っていないか確認した
  • 月給制スタッフの時給換算を、固定残業代を除いた金額で計算した
  • 雇用契約書・労働条件通知書の記載も新しい金額に合わせて更新する準備をした
  • 昇給後の既存スタッフとの時給バランス(新人と逆転していないか)を見直した

とくに最後の項目は見落としがちです。最低賃金に合わせて募集時給を上げた結果、長く働いてくれている既存スタッフと新人の時給が並んでしまうと、不公平感から離職につながります。募集時給の変更と既存スタッフの昇給は、セットで検討してください。

まとめ

  • 2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(56円引き上げ)。10月1日〜12月2日に都道府県ごとに順次発効
  • 募集時給・研修時給・月給の時給換算、固定残業代の内訳を、自店の県の新しい金額で確認する
  • 最低賃金は下限であって相場ではない。金額以外の情報量でも求人票を磨く

なお、給与設計や最低賃金の適用に関する個別の判断は、社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

※この記事の情報は2026年10月6日時点のものです。最新の金額・発効日は厚生労働省の公表資料をご確認ください。

コラム一覧へ戻る